自然体で居心地よく。「北欧」な照明をつくるには

DIALuxと照明計画
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自然体で居心地よく。「北欧」な照明をつくるには

DIALuxと照明計画入門 ひまわり照明設計室
公開済み by Writer -U174の blog · 17 6月 2022
Tags: 北欧照明

そもそも「北欧」とは

 
日本で「北欧デザイン」と言われているものは、英語では「Scandinavian Design」と呼ばれています。つまり、具体的に言うならば北欧デザインとはスカンジナビア半島に位置するスウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランド、アイスランドに端を発したデザインと説明することができます。
 
 
また、才気あふれるデザイナーたちが多数活躍した1950〜1960年代が北欧デザインの最も隆盛していた時期と言われており、これはミッドセンチュリーモダンの興り始めた時期とも重なるので、デザインや使用素材などにいくつかの共通点が見られるのも特徴です。
 
 

北欧デザインの背後にあるもの

 
 
北欧は一般的にイメージされている通り雄大な自然に囲まれた土地であるだけでなく、平均労働時間も先進諸国に比べて短いものの経済的にも苦しくなく、そのため家で過ごす時間が多いという特徴が挙げられます。
 
 
このライフスタイルがデザインにも大きく影響しており、文化として根付いた自然への敬意や生活そのものへの愛着、また日々をゆっくりと過ごす余裕といったものが建築物や雑貨、インテリアにも現れています。また年間を通して日照時間が少ないため、長く寒い夜を暖かく過ごすために照明をとても重視しているという説もあります。
 
 
そう考えると北欧デザインが人々をひきつけてやまないのもうなずける話です。つまり、多くの人は単に北欧スタイルのデザイン性の高さだけではなく、その背後にある“真の豊かさ”といえるもの、何事にも焦らされずシンプルに暮らしていくというライフスタイル自体に憧れを感じているのかもしれません。
 
 

北欧を理解するキーワード“Hygge(ヒュッゲ)”

 
上記のようなな北欧スタイルの特徴は、よく“Hygge(ヒュッゲ)”という言葉で表されます。これはデンマーク語で、直訳すると「居心地の良さ」という意味です。
 
 
北欧スタイルのインテリアを目指す場合、ナチュラルさを特徴としたシンプルでゆっくり過ごせる住空間を目指すと良いでしょう。そのためには部屋の中に置くものをすべて北欧系で固める、というよりは、あくまで“自分の気に入ったものを自然に配置する”としたほうがより「Hygge」に近づけるかもしれません。

北欧の代表的な照明デザイナー

 
ポール・ヘニングセン(Paul Henningsen)
 
ポール・ヘニングセンの最初のキャリアは建築家として、1920年頃に始まりました。建築を手がける傍ら、ルイスポールセン(Louis Poulsen)社とコラボレートして照明デザインにも携わり始めます。ほとんどのインテリアデザイナーが住居にまつわる様々な家具をデザインするのに対し、彼はインテリアデザイナーとしての情熱の殆どを照明器具に集中的に注ぎ込みました。
 
 
彼のイニシャルを冠した「PH」シリーズは北欧デザインを代表する非常に重要なプロダクトで、フロストガラス製の4枚の異なる形状のシェードを有機的に重ねて配置した「PH5」は、一つの光源から生まれる複数の間接光が独特の表情を生み出しています。また「PH5」のデザインを踏襲してシェードをさらに追加した「PH Snowball」、72枚の四角形のシェードを松ぼっくりのように配置した「PH Artichoke」などがポール・ヘニングセンの代表作として挙げられます。
 
 
コーレ・クリント(Kaare Klint)
 
1888年にデンマークのコペンハーゲンで生まれたコーレ・クリントは、数ある著名な北欧のデザイナーの中でも最初期に活躍した人物であり、そのため「デンマークの近代家具デザインの父」とも呼ばれています。
 
モダンなデザインが追求されていたインテリアデザイン業界の中にあっても、伝統的な家具デザインへのリスペクトやクラフトマンシップを尊重し、柔和で親しみやすいデザインのチェアや照明を生み出しました。
 
 
彼の照明作品は「レ・クリント(Le Klint)」としてその名が知れ渡っていますが、その基礎となるデザインはコーレの父である建築家のP・V・イエンセン・クリントのもの。ランプの明かりが眩しすぎないようにとイエンセンが羊皮紙をプリーツ状に折ってシェードを作ったものが代々受け継がれるレ・クリントのデザインの土台となりました。
 
このシリーズの発展にはコーレの兄のターエ・クリント、息子のエスベン・クリントなどの尽力によってデザイン的にも洗練されて行き、ビジネスとしても大きな成功を収めます。
 
コーレの作品は「Le Klint 101」、エスベンのものは「Le Klint 047」と「163」として知られており、おそらくこのシリーズの中で最も有名な「Le Klint KP172」は1970年代にポール・クリスチャンセンによってデザインされました。
 
「Le Klint KP172」はどこか貝殻を思わせる波打つ曲線が幾重にも重なって球体を形成している、まさにスカンジナビアン・モダンの名にふさわしい逸品です。
 
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